人気ブログランキング | 話題のタグを見る
<< 20090705 町内会の法人化      20090702 Lazulite >>

2009年 07月 02日
20090702 映画「劔岳 点の記」を観る
20090702 映画「劔岳 点の記」を観る_b0013099_11251413.jpg
 妻と映画「劔岳 点の記」を観に行って来た。6月20日に公開され、評判が良いという話だが、それにつられていったわけではない。
 「劔岳 点の記」は、新田次郎氏の小説を映画化したものである。「点の記とは三角点設定の記録である。・・・三角点標石埋定の年月日及び人名、覘標建設の・・・その三角点に至る道順、人夫賃、宿泊施設、飲料水等の必要事項を記録したもの」(新田次郎「劔岳 点の記」冒頭文より)である。

 この劔岳の測量が行われた前年に、小島烏水らによって日本山岳会が設立されている。彼らが劔岳の初登頂をめざしていることを知った陸軍参謀本部陸地測量部の幹部たちが、「何の目的も持たない、山岳会の人たちによって初登頂されたとすればそれこそ陸地測量部の恥でなくてなんであろうぞ」と、柴崎芳太郎らに「何としても初登頂を」と命令したことに端を発している。
 結局、柴崎らは宇治長次郎らの案内人の手助けで登頂するのであるが、そこには1000年以上も前の錫杖の頭と剣が見つかり、初登頂ではないことがわかる。
 ここからが圧巻だ。遅れて登頂した小島らが劔岳の頂上から、測量中の柴崎らに手旗信号で「初登頂おめでとう」のメッセージを送ってくる。それに応えて「登頂おめでとう」と送る。自然を愛するもの、山を愛するものの友情以上の何かが伝わってくる。それに対して軍部は非情である。「初登頂でなかったのだから、登頂そのものをなかったことにする」というのである。「軍の面子」にだけこだわった。軍隊の本質を見たような気がする。

 小島烏水や柴崎芳太郎の服装はおよそ「山に登る」ものとは見えない。明治も終わりごろとはいえ、登山装備は貧弱である。長次郎らはさらに貧しく見える。しかし果敢に挑戦していく姿、そこでの心の葛藤、そして劔岳を中心とした自然のすばらしさが充分に伝わってくる映画であった。

 帰宅して、新田次郎氏の「劔岳 点の記」をあらためて取り出してみた。昭和52年8月30日に初版が発行され、その年の12月10日に「第五刷」だから、当時でも評判だったことがうかがわれる。
20090702 映画「劔岳 点の記」を観る_b0013099_11254543.jpg


by TOSHIHIRO_SUGIMOT | 2009-07-02 23:23 | ●登山 | Comments(0)